3.高血圧症、心臓病の患者さんへ

 

高血圧症は生活習慣の 是正が非常に重要です。生活習慣のうち 1 肥満の方は減量 2 節酒または禁酒 3 減塩 4 カリウム カルシウム マグネシウム等の摂取 5 運動 6 禁煙または節煙 を特に改善しましょう。
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減量 生活習慣の改善のうち、減量が最も効果的です。肥満の方は減量により血圧が下がると同時に糖尿病、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞等)の予防にもなります。減量により降圧剤の効果も高まります。10kg減量すれば5年長が生きすると思って努力して下さい。
2 節酒または禁酒 酒の肝障害は有名ですが、それ以外に、酒飲みが酒を飲まない人に比べて血圧が高いという研究発表があります。また飲酒はボケを促進し、CTで脳の検査をすると長期に大量の飲酒をしている人は、時には脳(特に前頭葉)の萎縮が見られます。タバコと異なり酒を飲んでの自動車や飛行機の操縦は禁止されていることを思いだしてください。飲酒は一日おきで日本酒で一合以下がのぞましいですね。
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 減塩 食塩の摂取量は一日に10グラム以下、7グラム程度が望ましいとおもいます。ただ体質により減塩で血圧が下がる人とほとんど変化のない人がいます。どちらに属するか区別することはなかなか難しいです。
4 カリウム カルシウム マグネシウムの摂取 これらのイオン〔特にカリウム)には血圧を下げる作用がある事が判っています。これらを含む果物、豆類、野菜、コンブ、牛乳、小魚等をとるようにしましょう。ただし腎不全の方はとりすぎに注意してください。
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 運動 歩行などの軽度の運動はまちがいなく血圧をさげます。一回に30分から一時間、一週間に3-4回がよいと思います。ただし心臓の悪い人は別です。俗に老化は足から来ると申します。血圧が高くなくても歩行運動は重要です。  

6 禁煙または節煙 これは言うまでもなでしょう。

 心臓病の治療のトピックス

 狭心症の治療は、薬物療法以外に現在心臓カテーテルによるPTCA(カテ―テルの先端に風船をつけて、狭くなった冠動脈をふくらませる)あるいはステント(後述)による治療と冠動脈のバイパス手術が主ですが、最近日本でも、幹細胞を心臓に植え込み冠動脈の血管を増殖させる手術が始まっています。これはいわゆる再生医療の一種ですが、患者の骨髄細胞をできるだけ多く採取し この中から血管になる幹細胞を分離して取りだし開胸して心臓の筋肉に直接 その幹細胞を注射する治療です。 普通 冠動脈のバイパス手術と同時に行われます。 手術後 血管が増殖するのを待ちます。 手術としては患者さんの負担もすくなく、再発もすくないといわれています。外国ではかなり広く行われているようですが,未だ日本では数箇所でしか行われていませんが将来期待できそうです。

 冠動脈の狭窄においては上記のように心臓カテーテルによってステントと呼ばれる細い金網状の円筒を冠動脈の狭窄部位に入れ冠動脈を広げる治療がありますが、せっかくステントを入れて治療しても1年以内に50%近く再び狭窄してしまいます。 この欠点を少なくするため免疫抑制剤、抗がん剤を厚く塗ったステントが開発されました。このステントは冠動脈の狭窄部位に設置後 塗られた薬剤がゆっくり溶けていくことにより再狭窄を防ぎます。この薬剤溶出ステントはアメリカでは、かなり以前から臨床使用されていますが日本でも、20043月保険適応になりました。

冠動脈の狭窄に対するステント治療においては再狭窄が起こりにくいステント(前述)の開発も重要ですが再狭窄が起こりにくい内服薬の開発も重要です。通常アスピリンが再狭窄防止に使用されています。アメリカではクロピドグレルという抗血小板凝集剤が開発されステント挿入の患者さんにアスピリンと併用のかたちで臨床使用されステントの再狭窄、血栓防止に効果をあげています。日本でも2004年クロピドグレルが保険適応になり臨床使用されるようになりました。クロピドグレルはもちろん心筋梗塞、脳梗塞の防止にも効果があります。

 ステントによる治療はステントが金属で出来ている限り人間にとっては異物で永久に体内に残ります。そのため再狭窄したり血栓が出来たりします。ステントを狭窄部位に設置後、ゆっくりと次第に人体に吸収されるような金属以外の物質で作る研究が以前よりなされています。これならステントは体内に永久に残ることは有りません。未だ動物実験の段階ですが、これが臨床使用されるには、まだまだ時間がかかるようです。

 冠動脈の狭窄に対して狭窄部位がカチカチに石灰化していてPTCA(カテーテルの先端の風船で狭窄部位の内径を拡大)あるいはステント(前述)による治療が適していないとき、日本でもローターブレーダーによる治療が始まっています。これは簡単に言えばカテーテルの先端に超小型のドリルを設置し、このドリルを一分間に10万回以上 回転し石灰化した狭窄部位を削り取り狭窄部位の内径を拡大する治療です。ローターブレーダーによる治療後、アスピリンとクロピドグレルを内服することで治療効果をあげているようです。

 さらに狭心症あるいは心筋梗塞のような虚血性心疾患においては上記の如く冠動脈の血管の増殖が重要ですが、ごく最近になって本人の皮膚を皮膚培養して培養した皮膚を心臓の虚血部位の表面に張り付けるように移植すると、虚血部位の血管が増殖することがわかってきました。この方法は移植と言っても自己の皮膚ですから拒絶反応はありません。現在は動物実験の段階ですが、これも将来は、有望な治療方法になると思います。再生医療は、脊髄損傷、脳障害を含めてこれからどんどん進歩しそうですね。


 これとは別に下肢等の骨格筋を採取し この筋の細胞を組織培養し筋肉を作り これを心臓の心筋の壊死部分に移植する研究が始まっています。 自己の骨格筋から培養した筋肉を移植するため拒絶反応はありません。日本では 未だ動物実験の段階ですが 外国では人間による臨床研究も始まっているようです。

 心筋梗塞は心臓に栄養を送る冠動脈がつまり心筋が壊死する非常に危険は病気です。心筋梗塞の内科的治療には冠動脈をつまらせた血栓を溶かす薬剤を心臓カテーテルで注入するか、または点滴静注するかの方法がありますが治療効果はあまり高くはありません。心筋梗塞の新しい内科的治療が現在研究されています。白血病の治療に使用される特殊なホルモンG-CSFを急性心筋梗塞の直後に使用すると心筋梗塞の壊死した心筋が著しく改善されうとのことです。このホルモンはいままでの薬剤のように心筋の壊死の広がりを止めるのではなく骨髄の幹細胞が多分血管を通して壊死した心筋部分に集まり心筋細胞を再生するとのことで、一種の再生治療といえます。この治療はすでに試験的に人間の心筋梗塞の治療としておこなわれております。このホルモンは以前より白血病の治療薬として市販されていますから比較的はやく普及されると思います。

 高度の心不全である拡張型心筋症は、薬物治療の反応が極めて悪く心臓移植か心臓の心筋のうち収縮力のない部分を切り取るバチスタ手術しか治療の方法がないとも言われていますが、最近成長ホルモンが心筋を再生することが判ってきました。成長ホルモンによる、拡張型心筋症あるいは高度の心不全の治療が外国では、進んでいるようです。もちろん日本では、いまだ通常の病院では許可されていませんし、また副作用も心配です。日本でも臨床試験が始まるようです。これも将来かなり期待できそうです。
 
 高度の心不全の治療として上記の成長ホルモンによる治療以外に特殊な心臓ペースメーカー(体内に埋めこむ電気パルス発生装置)による治療が注目されています。通常心臓ペースメーカーは不整脈の治療に使用されますが、不整脈の治療のためのペースメーカーは心臓の中の右室内で電気刺激をします。心不全の治療のためのペースメーカーでは右室のみならず冠状静脈洞からの左室へも電気刺激をします。このようなペースメーカーは、すべての心不全が適応になるわけではありませんが、日本でも次第に普及すると思います。